学生納付特例制度を利用していた方の中には、「追納したほうがいいのか」と迷っている方もいるのではないでしょうか。
将来の年金額に影響すると聞くと気になるものの、今の生活の中で無理に支払うべきか悩むこともあるでしょう。
追納には期限があり、タイミングによっては加算額が発生する点にも注意が必要です。一方で、社会保険料控除の対象となり、節税につながるケースもあります。
この記事では、学生納付特例制度の追納について、仕組みや手続きの流れを整理しながら、無理のない判断ができるようポイントをわかりやすく解説します。
学生納付特例制度とは?まずは仕組みを簡単に確認
学生納付特例制度とは、20歳以上の学生が国民年金保険料の支払いが難しい場合に、納付を一時的に猶予してもらえる制度です。
大学生や専門学生などで、一定の所得基準を満たしていれば利用できます。
本来、20歳になると国民年金への加入が義務となり、保険料の支払いが必要です。しかし、学生のうちは収入が限られているケースも多いため、保険料は大きな負担となります。
この制度を利用した場合、「未納」ではなく「猶予」として扱われ、将来、年金を受け取るための資格期間には反映されます。
ただし、そのままでは年金額には反映されないため、あとから「追納」という形で支払うことも可能です。
学生納付特例制度は追納したほうがいい?しないほうがいい?
学生納付特例制度を利用した期間の保険料は、あとから「追納」として支払えます。
ただし、すべての人にとって追納が必要とは限らず、状況によって判断が分かれる点に注意が必要です。
将来の年金額を増やしたい場合にはメリットがある一方で、現在の生活に無理が出るのであれば、優先順位の見直しも大切です。
ここでは、追納する場合としない場合、それぞれのポイントを整理していきます。
追納するメリット
追納の大きなメリットは、将来受け取る老齢基礎年金の金額を増やせる点です。
学生納付特例制度を利用した期間は、そのままでは年金額に反映されないため、将来の受取額を補うためには追納が必要です。
また、追納した保険料は社会保険料控除の対象となり、所得税や住民税の負担が軽くなる可能性もあります。
追納しない場合のデメリット
追納を行わない場合、将来受け取る年金額がその分少なくなります。
受給資格にはカウントされるものの、金額には反映されないため、「満額に近づけたい」と考える方にとってはデメリットともいえるでしょう。
また、追納できる期限が決まっており「追納しておけばよかった」と思っても期限が過ぎてしまうと支払いできません。
支払い期限は10年ですが、3年を過ぎると加算額が上乗せされるため、判断を先延ばしにすると負担額が大きくなる可能性があります。
追納するか迷ったときの考え方
追納するかどうかは、「今の生活」と「将来の安心」のバランスを考えましょう。
たとえば、学生納付特例期間が終了し、一定の収入があり生活に余裕ができた場合、追納を検討するのもよいでしょう。「将来の年金を少しでも増やしたい」と考えている場合には有効です。
一方で、預金や生活費に余裕がない場合は、無理に追納を優先する必要はありません。
追納しない場合、罰則はありませんので自分の状況に合わせて判断しましょう。
追納期限や加算額の仕組みを確認したうえで早めの判断をおすすめします。
追納しない人はどれくらい?
学生納付特例制度を利用した人のうち、実際に追納を行っている人はそれほど多くありません。
厚生労働省の資料によると、学生納付特例を受けた人のうち、10年以内に追納を行っている割合は8.9%(2024年時点)にとどまっています。
このことからも、多くの人が追納をしないままになっている実態がうかがえます。
その背景には、まとまった金額を用意する負担や、制度の理解不足など、さまざまな理由があると考えられます。
※参考資料
厚生労働省「国民年金保険料の納付猶予制度について」
学生納付特例制度の追納期限はいつまで?
学生納付特例制度で猶予された保険料は、あとから「追納」として支払えますが、期限が定められています。
原則として、追納できるのは猶予された月から10年以内です。
たとえば、大学1年生のときに猶予された保険料は、その時点から10年以内であれば追納が可能です。
この期間を過ぎてしまうと、あとからの支払いができなくなるため注意が必要です。
また、猶予から3年を過ぎると「加算額」が上乗せされる仕組みになっています。
すぐに全額の支払いが難しい場合には、分割での追納も可能です。
計画的に無理のない範囲で追納を検討するとよいでしょう。
なお、追納する保険料の金額は、当時の保険料額をもとに計算されます。
そのため、必ずしも「古い期間ほど高くなる」とは限らず、年度によっては現在よりも低い金額となるケースもあります。
追納すると加算額はいくら?金額の仕組み
学生納付特例制度の追納では、すべての期間に加算額がかかるわけではありません。
前述の通り、猶予された期間から3年を過ぎた分のみ上乗せされる仕組みになっており、経過した期間に応じて少しずつ増えていきます。
なお、具体的な加算額や保険料は年度ごとに異なります。
実際に追納を検討する際は、日本年金機構から送付される案内や、最新の保険料額を確認するようにしましょう。
以下は、過去に学生納付特例制度を利用し、令和8年度中に追納する場合の保険料額です。
日本年金機構のサイトで金額を確認できます。
| 免除を受けた年度 | 学生納付特例 |
|---|---|
| 平成28年度の月分 | 16,850円 |
| 平成29年度の月分 | 17,070円 |
| 平成30年度の月分 | 16,900円 |
| 令和元年度の月分 | 16,950円 |
| 令和2年度の月分 | 17,070円 |
| 令和3年度の月分 | 17,110円 |
| 令和4年度の月分 | 16,990円 |
| 令和5年度の月分 | 16,770円 |
| 令和6年度の月分 | 16,980円※ |
| 令和7年度の月分 | 17,510円※ |
※追納加算額はありません。
※出典:日本年金機構「国民年金保険料の追納額一覧」
古い年度のほうが金額が低くなる場合もありますが、3年以上前の分を追納する場合は加算額が上乗せされます。そのため、「古い分だから安い」とは限らず、追納するタイミングによって金額が変わる点に注意が必要です。
追納の申請を行うと、日本年金機構から納付書が届きます。
納付書を使用し、以下の支払い方法から選んで納付します。
- 金融機関、郵便局
- コンビニエンスストア
- 電子納付(Pay-easy)
- スマートフォンアプリ
詳しい納付方法は、納付書や日本年金機構のサイトで確認してください。
保険料を親が払うことはできる?控除や節税のポイント
国民年金の保険料は、本人だけでなく親が代わりに支払っても問題ありません。
学生納付特例制度を利用せず、親が保険料を負担する場合のポイントを確認しましょう。
親が支払うと社会保険料控除の対象になる
親が子どもの国民年金保険料を負担した場合、その金額は親の社会保険料控除として扱われます。
生計を一にしている家族の保険料であれば控除の対象となり、所得税や住民税の負担軽減につながる可能性があります。
あえて学生納付特例制度を利用せず、親が支払い節税メリットを得るというのも選択肢の1つです。
年末調整または確定申告で手続きが必要
社会保険料控除を受けるためには、会社員の場合は年末調整、自営業の方などは確定申告で手続きを行います。
また、実際に保険料を支払ったことを証明する控除証明書や領収書などの提出が必要です。
控除証明書は、日本年金機構から毎年10月から11月頃に送付されるもので、その年に納付した保険料の金額が記載されています。
年末調整や確定申告の際に使用する重要な書類となるため、大切に保管しておきましょう。
追納を親が支払うケースは限定的
学生納付特例制度を利用した場合でも、あとから親が追納すること自体は可能です。
ただし、追納のタイミングでは、すでに就職しているケースも多く、「生計を一にしているかどうか」という条件に当てはまらない可能性があります。
そのため、実務上は現役の学生期間中に親が支払うケースのほうが一般的といえるでしょう。
無理のない方法を選ぶことが大切
親が支払うと節税効果が期待できる場合もありますが、家計への負担も考慮する必要があります。
学生納付特例制度を利用するか、親が支払うかは、それぞれの状況に応じて無理のない方法を選びましょう。
追納した場合いくら増える?
学生納付特例制度を利用した期間の分を追納すると、将来受け取る年金額を増やせます。目安として、1年分を追納した場合、老齢基礎年金が年間でおよそ2万円程度増えるとされています。
追納しない場合、受給資格期間には含まれるものの、年金額には反映されません。将来の受取額を増やしたい場合は、追納を検討するとよいでしょう。
学生納付特例制度と未納の違い
「学生納付特例制度」と「未納」は、同じように保険料を支払っていない状態ですが、扱いは大きく異なります。
学生納付特例制度を利用している場合は「猶予」として扱われ、将来の年金を受け取るための資格期間に含まれます。
また、万が一の際、障害年金や遺族年金の対象となる点も大きな特徴です。
未納の場合はこれらの対象外となる可能性があり、将来の年金にも影響が出るおそれがあります。
まとめ
学生納付特例制度は、学生でも無理なく年金制度に参加できる仕組みとして用意されています。
追納を行うと将来の年金額を増やせますが、必ずしもすべての人にとって優先すべきとは限りません。期限や加算額、控除による節税効果などを踏まえ、自分や家族の状況に合わせて判断しましょう。
学生納付特例制度を正しく理解し、「放置しないこと」が最も大切といえます。

